
ゼロショットテクスチャ異常検知
- Post by: admin
- 2025-03-14
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近年、工業検査や品質管理において、画像中の異常検知の重要性が高まっている。特に、テクスチャ画像の異常検知は、従来の多くの手法が多数の正常画像を前提とする中で、入力画像と正常画像の向きが一致しない場合に精度が低下する問題が指摘されていた。既存の手法は、事前に大量の正常画像から抽出した特徴に基づき異常箇所を検出するが、画像中に方向性(anisotropy)が存在する場合、向きのずれが原因で正常な領域も誤検出されるリスクがあった。
提案手法
本研究では、正常画像を一切使用せずにテクスチャの異常検知を行うゼロショット手法を提案している。提案手法は、入力画像内の局所的な外観の一貫性、すなわち均一性(homogeneity)に着目する。具体的には、事前学習済みのCNN(WideResnet-50-2など)を用いて、画像の中間層から局所特徴を抽出する。得られた各局所領域の特徴同士の距離を計算し、ある領域が周囲と大きく異なる場合、その部分を異常と判断する仕組みである。特徴空間上で、各画素の特徴からその近傍にあるK個の類似特徴との平均距離を算出し、その最大値(α(I))を用いて入力画像全体の均一性を評価する。α(I)が小さいほど画像全体が均一であり、正常であると判断できると同時に、この指標を基にゼロショット手法の適用可能性を事前に評価できる。

実験と考察
提案手法は、標準的なMVTec ADや、テクスチャの多様性を持つDTDから生成したDTD-Synthetic、さらにAitexやDAGM2007といったデータセット上で評価された。実験結果から、従来の多数の正常画像を必要とする手法(例:PatchCore)と比較して、向きのずれによる影響を受けず、特に少数ショット環境下で高い検出精度(AUROCがほぼ100%に近い値)を達成していることが示された。また、異常箇所を画像レベルおよびピクセルレベルで同時に検出できる点や、画像の前処理(リサイズ、センタークロップ、ガウシアンフィルタ)の工夫により、境界部分での誤検出を抑制できることも明らかとなった。これにより、ゼロショット手法は、向きの不一致が生じる実環境においても堅牢な異常検知を実現している。


結論
本論文は、テクスチャ画像の異常検知において、従来問題となっていた方向性の不一致の影響を回避するため、正常画像を必要としないゼロショット手法を提案した。入力画像の局所特徴の均一性に基づく異常スコアを算出し、その最大値を指標とすることで、手法の適用可能性を事前に評価できる点が大きな特徴である。実験では、少数ショット条件下でも従来手法を上回る高精度な検出結果が得られ、工業検査など実用的な応用に向けた有望なアプローチであることが確認された。今後は、より複雑なパターンや非テクスチャ画像への展開も期待され、ゼロショット異常検知のさらなる発展が望まれる。
発表論文
Aota, Toshimichi, Lloyd Teh Tzer Tong, and Takayuki Okatani. “Zero-shot versus many-shot: Unsupervised texture anomaly detection.” Proceedings of the IEEE/CVF Winter Conference on Applications of Computer Vision. 2023.
@inproceedings{aota2023zero, title={Zero-shot versus many-shot: Unsupervised texture anomaly detection}, author={Aota, Toshimichi and Tong, Lloyd Teh Tzer and Okatani, Takayuki}, booktitle={Proceedings of the IEEE/CVF Winter Conference on Applications of Computer Vision}, pages={5564--5572}, year={2023} }